【物語ストーリー・登場人物】

小説『おくりびと』。この物語は、東京在住の平凡なサラリーマンが、ある時、突然思い立って、1億円を貯めようと決意。家族に内緒でこっそりと億り人を目指して奮闘する物語です。

 

【登場人物(仮名)】

●幹夫・・・主人公。大手金融機関勤務。集中すると凄まじく能力を発揮するが、やる気が出ない時はほぼ何もしない。洞察力鋭く、場の雰囲気を読むことに秀逸で、初対面でもすぐに馴染む。ただ、思ったことを臆せずそのまま口にするため、ある意味で敵を作りやすいタイプ。社内での出世等には一切関心なし。ただ、営業センス抜群で営業マン時代に営業成績で全国NO.1になったこともあり、その流れで管理職に就いたこともあり。現在は、慣れない事務部門での内勤となり、やや持て余している感じ。趣味はスパイスカレーの食べ歩き。

 

●なつ・・・妻。主人公の幹夫とは職場結婚。ちょっと(かなり?)天然系。優しい性格で、誰からも好かれる。幹夫と正反対で、まず外の世界で敵を作らないタイプ。現在、パートに出ながら2人の娘の子育てに奮闘中。パート先でも天然系キャラを発揮しているようでエピソードに事欠かない。元大手金融機関に勤務していた割には金融リテラシーゼロ。投資等にはまったく興味なし。得意技:一度観た映画の内容はすぐ忘れるため、何度でも新鮮な状態で同じ映画を観れる

 

●菜緒・・・長女。中学生。バレーボール部のキャプテン。ただ、運動神経はイマイチ。SNSにハマっている今どきの普通の女の子。本人は全力で否定するものの、どちらかというと父親似。現在は青春満喫している感じで、絶賛反抗期中。父親同様に、いったんやる気になると物凄い集中力を発揮する。一方で、何事につけてダラシなく、将来が少し心配…

 

●莉菜・・・次女。小学生。地域のバスケットボールのクラブチームに所属。バスケに夢中のスポーツ少女。こちらはどちらかというと母親似。だが、何故か幼い物心ついた時から、4つ年上の姉のことを''菜緒''と呼び捨てにしている勝ち気な面もあり。バスケにおける向上心をもう少し勉強にむけてくれると。お姉ちゃんを反面教師にこちらはしっかり者。

WBC

連日、日本列島を熱狂させているWBC(ワールドベースボールクラシック)。幹夫もこれまで全試合テレビで観戦中。やはり、日本代表を応援するというのは良いものだ。

メキシコ戦に至っては、大興奮。

まずは先制されたメキシコの3ランにがっくり。吉田の値千金の同点3ランに跳び上がって喜ぶも、次のイニングで再び2点差をつけられ怒り狂う。その裏に山川の犠打で1点返して望みをつなぎ、いよいよ最終回。メキシコの攻撃はなんとか0点に抑え、9回の裏に突入。

大谷から始まる打順に期待が膨らむ。その初球を叩き、期待を裏切らないツーベースヒット。ヘルメットを脱ぎ捨てて全力で2塁を狙いにいった大谷の気迫溢れる走塁に何かが起こりそうな予感を感じる。これでノーアウト2塁。同点ランナーだ、よし何とかタイブレークに持ち込める、と期待し始めた日本ファン。

前打席で値千金の同点スリーランを放った吉田が四球でノーアウト1、2塁。ここは手堅く送りバントで…と思ったら、なんと吉田に替えて代走に周東。え、マジ?吉田を下げちゃうの?栗山監督はこの回で決めようとしているらしい。

バッターボックスには本日3三振の村上が、バントの構えなど微塵もみせずに打席に立つ。内野ゴロでダブルプレーとか嫌な予感。祈るような気持ちで…というかもはや祈りながらテレビのモニターを見つめる幹夫。

そして、迎えた3球目。相手投手のストレートを村上が綺麗にセンターオーバーで弾き返す。2塁にいた大谷がホームを踏み同点、と思ったら、韋駄天周東が、あっという間にスライディングでホームインして逆転サヨナラ勝利!

この瞬間、日本列島が歓喜の絶叫。

明日はアメリカとの決勝戦。会社休めば良かった。せめてテレワークにしとくべきだった…と後悔する幹夫。観戦は出来ないが、日本の勝利を願ってやまない。

 

オプション取引の方は、悪夢の3月限SQが終わり、気がついたら26000円台。おいおい、そりゃあないだろう、といっても仕方ない、後の祭り。

比較的大きく動いてくれたおかげで、4月限は順調。米国やスイスの銀行の経営破綻で急速に悪化している市場のセンチメント。いつ暴落がきてもおかしくない状況。そして、幹夫はその暴落を待ち構えている。

 

 

牛角

久しぶりに家族全員で牛角に行くことになった。事の発端は、誕生日を間近に控えたなつが突然『焼き肉食べたーい』と言い出し、それに期末試験を控えて最近機嫌の悪かった菜緒と、インフルエンザで学級閉鎖のため持て余し気味の莉菜が乗っかり、『焼き肉、焼き肉』の大合唱。家族全員で足を運ぶことに。

開店と同時の時間に予約を入れ、かつ、菜緒と莉菜に至っては昼食を抜いて食べる気満々。食べ放題用のタブレットが来るなり、鬼のように注文。莉菜はお気に入りの“はちみつ黒胡椒豚カルビ”一択。菜緒に至っては、序盤から“おさつバター”を注文する豪傑ぶり。

幹夫となつは王道の“タン塩”から舌鼓。その後もカルビ、豚カルビ、味噌だれカルビ、と肉三昧。誰も野菜を頼まず、ひたすら肉を喰らう。

その中で一同が感動したのが、中盤で注文した“梅トンタン塩”。この梅ダレが絶品!肉の脂まみれになっていた口の中が、一瞬でサッパリする優れもの。特に莉菜がハマって、あらゆる肉に梅ダレをつけて食べている。

ラストオーダー10分前のところで、まずは幹夫がギブアップ。もうこれ以上食べれませーん。やはり、若い頃とは胃袋が変わってきたな…次になつも満足したようでギブ。

菜緒と莉菜は相変わらず食べ続けている。莉菜に小学生のため半額なので、完全に元を取っている。ラスト3分のところで、莉菜もギブアップ。最後まで食べ続けた菜緒が、ラストオーダーで人数分の牛角アイスを注文してフィニッシュ。この牛角アイスが美味しくて、これまた一同感動。別に初めて食べたわけでもないのだが…

兎にも角にも全員お腹いっぱい。幹夫が会計をする。店員さんからレシートは要りますか?と聞かれ、通常は不要と答えるのだが、莉菜が何皿食べたのか気にしていたので、もらうことに。もらったレシートを莉菜に渡す。莉菜と菜緒がきゃっきゃ騒いでいる。どうやら60皿近く食べたらしい。家族全員で大満足。2月も終わろうとしているが、まだまだ冷たい風が吹くなか、帰途についた。

 

さて、幹夫のオプション取引のポジションは、というと、相変わらずのレンジ相場、いったん入れた期先の買い玉を全決済して、20万強ほど利益を積み増した。このままの価格帯でSQを迎えそうだが、そうは言ってもメジャーSQ。このまま、素直に着地するとも思えない。春の嵐はやってくるのか…蓋を開けてみるまで誰にもわからない。

確定申告

また今年もあの時期がやって来た。『か』で始まるアイツである。

『花粉症』…あ、来たなぁ、確かに飛んでる、飛んでる。鼻がムズムズし出している。ただ、同じ『か』で始まるものだけど、それは不正解。正解は『確定申告』!

幹夫はサラリーマンであるものの、ここ十数年は確定申告をしている。マイナンバーカードが出来てから、飛躍的に申告が便利になったが、今年は気になることがあった。

マイナンバーカードの保険証利用について、だ。マイナンバーカードが、保険証として使用出来るようになったことは知っていた。だが、それは確か何らかの手続きが必要なはず…何の手続きもしてないのに、確定申告でいきなりマイナンバーカードで医療費通知情報が出てきたもんだから、びっくり仰天。

調べてみると、どうやら健保から連携されたらしい。幹夫の会社では、本年度に入ってから、執拗にマイナンバーカードの取得推進が図られていた。業界団体を通じて、行政より圧力がかかったようだ。マイナンバーカードが世に出た早々から保持していた幹夫にとっては他人事だったが、まさか、こんな形でいきなり影響を目の当たりにするとは。

なんか医療情報を会社(正確には健保)に握られているだけでも気持ち悪いのに、お上まで知れちまうとは。トホホ…

元々、徴税強化を真の目的としているという噂のマイナンバーカード。そのうち、金融機関も行政の軍門に下って、預金や投資結果などが全て詳らかに晒されてしまうのでは…別に脱税しようってんじゃないが、出来ればそうした世界は来て欲しくないもんだ、つくづく思う。

 

翻って、相場概況。

相変わらずのレンジ相場継続。楽観的な市場と冷徹な現実の間で、相場は身動きが取れなくなってしまっているようだ。動き出しはいつになるやら…

バレンタインデー

2月14日といえば、バレンタインデーである。

女性から男性に想いを伝えて渡す本命チョコから、日頃お世話になっている人たちへ、感謝の気持ちを少しだけ入れた義理チョコまで、年に一度の男性陣がソワソワする日でありました、昔は!

それが今では、友チョコやら自分へのご褒美チョコがメインだという。

それで良いのか、大和撫子。古き良き昭和の時代よ、カムバッ〜ク!そう叫ばずにはいられない。

幹夫の家には、なつ、菜緒、莉菜と3人も女性がいるため、期待度は高い。にもかかわらず、だ。

誰も幹夫にチョコをくれず、それどころか、目の前で繰り広げられているのは、友チョコを貰った数の競い合い。だから、そういう日じゃないんだって。もういいわ。

 

 

今年のバレンタインデーは、米国の経済指標のCPI発表の日。結果は、インフレの下落スピードが予想より緩んだこともあり、インフレ再燃への懸念が燻っている。

日経先物は、指標発表直後こそ上下に乱高下したものの、結局は円安に振れたドル円相場を好感して上昇。最近は、指標の発表に一喜一憂するのにも少々飽きてきた感じ。

2月の天王山と言われた米国CPIの発表でも、トレンドは作れず。一体、いつまでこのレンジ相場は続くのだろうか…

降雪

東京で雪が降った。

北海道や東北、北陸から山陰地方の人達から見たら、鼻で笑われてしまいそうだが、東京で雪が降り、5cmでも積もろうものなら、もう一大事。

警報は出るわ、電車は間引き運転になるわ、挙げ句の果てに、勤務先から帰れるうちに早く帰りなさい、とせっつかれる始末。

幹夫の会社でも、昼前に総務部から午後からの帰宅やテレワークへの切り替えを促すメールが流れてきた。みんな浮き足だって、帰宅する意思を固めつつ、まずは腹ごしらえ、と昼食に向かった。

ところが、だ。この昼食の時間中に雪が雨に変わり、みるみるうちに積もった雪が溶けていく。帰る気満々だった事務職の人達がブーブー言ってる。せっかく帰宅する気満々だったのに…

鼻っから帰宅する気がなかった幹夫は、帰り道が歩きづらくならずにホッとする反面、窓から見える景色は雪景色の方が情緒があるな、なんて考えながら仕事に勤しむ。

『あー、もう帰ろ。今日は早帰りにしよっと』

連日、残業続きでお疲れ気味の幹夫。降雪にかこつけて早めに帰路についた。外に出ると、結構な雨が降っており、アスファルトの上には跡形もなかったが、土の上などには、まだそこそこの雪が残っている。

『午前中のペースで降り続いたら、結構、積もってたかもな…』

安心したような、少し残念だったような、そんな気持ちになった幹夫であった。

 

本日は、2月限のSQ日。普段の限月だったら、スマホ片手に速報値が出るのを、今か今かと確認するのだが、今回は朝からの降雪や保有ポジション的にあまり関心がなくなっていたため、数値のチェックが昼休みになった。

『お、結構上に行ったな。ほぼほぼ、幻のSQ値になってるじゃん。でも、やっぱり引き上げてからのドスンかぁ』

ここ最近のレンジ相場の影響を受けて、取引回数が極端に少なくなっている。そろそろ、どちらかに大きく動き出しそうだが、何が契機になるか、検討がつかない。FOMC、米国雇用統計、GAMATの決算発表、はたまた次の日銀総裁候補に関する観測記事も、大きなトレンドを形成するには至らず。

『何が起これば、動意づくんだよ…でも、こういう時に調子に乗って、オプションの売りポジションを持ち過ぎて大火傷するんだよな』

最近は、オプション取引において裸売りをすることはほとんどない幹夫だが、さすがにこれだけレンジ相場が続くと、痺れを切らしてくる。

『はぁ、もう上でも下でもいいから、動いてくれぇ〜』

ただ、上に動かれたら本当は困る幹夫であった…

復習

世間では受験シーズン真っ只中。

我が家では、来年受験をする予定の莉菜が何故か勉強に精を出している。

『あー、よく勉強した!もう、宿題も完璧にやって、この前のテストの復習までしちゃったもんね』

自慢げにリビングに入ってくる莉菜。

『へぇ、それじゃあ、もう一回テストやったら100点取れるんだ?』

と幹夫が聞く。途端に固まる莉菜。

『なんで?』

『え、だって復習したんでしょ?』

『したよ』

『じゃあ、100点取れるじゃん。間違えたところをもう一回勉強したんでしょ?』

『そういうんじゃないんだよなぁ。なんか、ナーバスな受験生に対して、そういう言い方ないわ…』

『えー、なんで。勉強の話ししてんだよ。ないわとかないわ。復習ってそういうもんでしょ』

『・・・』

無言で子ども部屋に戻っていく莉菜。1時間後に再びリビングに戻ってきた。

『あのねー、いまテスト問題を解き直した』

『100点だった?』

『89点』

『何を間違えたの?』

『んとね、漢字とか、計算ミスとかじゃないんだよねー。なんかぁ、考え方というか、解き方が分からないのだけ、間違えた』

『は?・・・』

そういうのを解決していくのを復習というのではないのか?心の中で幹夫は叫ぶ。ただ、それを口に出して言うとよろしくないので、言い方を変える。

『そういう今までわからなかったことが、分かるようになることが成長だよ。莉菜は、復習を引き算で考えているでしょ。前回うっかり間違えたところをなくして、うっかりミスや注意不足を少なくすることを復習と思ってるでしょ。そうじゃないよ。復習は足し算だよ。今まで分からなかったこと、考えつかなかったやり方を新たに学んで身につけることによって、次の時により多くのことが理解出来るようになって始めて成長するんだよ』

『うーん、なるほどね…』

偉そうに高説を垂れる幹夫であった。

 

その復習をトレードに活かせているのだろうか?最近は見(けん)が多く、めっきりトレード回数が減った幹夫。トレードチャンスがないなら、しっかりと過去から現在に至るまでのプロセスを復習して、新たな発見でもすればオンの字だが、先々の相場の動きを予測して頭を悩ませてしまうのはトレーダーの性か…莉菜との会話が自分自身に深く染み入る幹夫なのであった。