復習

世間では受験シーズン真っ只中。

我が家では、来年受験をする予定の莉菜が何故か勉強に精を出している。

『あー、よく勉強した!もう、宿題も完璧にやって、この前のテストの復習までしちゃったもんね』

自慢げにリビングに入ってくる莉菜。

『へぇ、それじゃあ、もう一回テストやったら100点取れるんだ?』

と幹夫が聞く。途端に固まる莉菜。

『なんで?』

『え、だって復習したんでしょ?』

『したよ』

『じゃあ、100点取れるじゃん。間違えたところをもう一回勉強したんでしょ?』

『そういうんじゃないんだよなぁ。なんか、ナーバスな受験生に対して、そういう言い方ないわ…』

『えー、なんで。勉強の話ししてんだよ。ないわとかないわ。復習ってそういうもんでしょ』

『・・・』

無言で子ども部屋に戻っていく莉菜。1時間後に再びリビングに戻ってきた。

『あのねー、いまテスト問題を解き直した』

『100点だった?』

『89点』

『何を間違えたの?』

『んとね、漢字とか、計算ミスとかじゃないんだよねー。なんかぁ、考え方というか、解き方が分からないのだけ、間違えた』

『は?・・・』

そういうのを解決していくのを復習というのではないのか?心の中で幹夫は叫ぶ。ただ、それを口に出して言うとよろしくないので、言い方を変える。

『そういう今までわからなかったことが、分かるようになることが成長だよ。莉菜は、復習を引き算で考えているでしょ。前回うっかり間違えたところをなくして、うっかりミスや注意不足を少なくすることを復習と思ってるでしょ。そうじゃないよ。復習は足し算だよ。今まで分からなかったこと、考えつかなかったやり方を新たに学んで身につけることによって、次の時により多くのことが理解出来るようになって始めて成長するんだよ』

『うーん、なるほどね…』

偉そうに高説を垂れる幹夫であった。

 

その復習をトレードに活かせているのだろうか?最近は見(けん)が多く、めっきりトレード回数が減った幹夫。トレードチャンスがないなら、しっかりと過去から現在に至るまでのプロセスを復習して、新たな発見でもすればオンの字だが、先々の相場の動きを予測して頭を悩ませてしまうのはトレーダーの性か…莉菜との会話が自分自身に深く染み入る幹夫なのであった。